鏡の中のわたしは知らない人

 

わたしは

 

自分のことはすきだ

 

たぶんだれにも言ったことないけど、鏡にうつった自分を見て、お、かわいいなっていつも思ってる

 

でもそれは家の鏡の前でだけ

 

 

 

学校のトイレで、駅のトイレで、友達の家の洗面所で、

 

完全にひとりの空間じゃなくなっただけでその感情はなくなる。

というかあるのはあるんだけど、表に出てこなくなる。

 

わたしはメイクに関心があっても、面倒だったりメイクをした自分の顔がすきじゃなかったりして、メイクにあまり力を注がない。というかたまたま気が向いたとき、1年に数回程度しかしない。

 

髪も、スタイリングしたらもっとかわいくなるかな、かっこよくなるかなって思うけど、朝起きられないし面倒だし準備の時間配分が大抵合わないし、でほとんど手を加えないで過ごしてる。

 

 

 

そうすると外出先で鏡の前に立った時、こんなに外見に力を注いでないのに、鏡で何をチェックするんだ?とそわそわし始める。

 

変なとこないかなって確認するために立ったのに、髪を結び直すために立ったのに、目やについてたらやだなとか思って立ったのに、

 

わたしみたいなやつが鏡の前立って外見気にしてるの変だよねーー、気にするほどきれいにしてないのにねー、だれも見てないのにねーー、みたいに思い始める。

 

 

そしてこれがわたしの声じゃないことはわかってる。

だって本当は鏡の前に立って自分の姿を見るのはすきなのだから。

 

風呂入ってたって、シャワーが水からお湯にかわる間にすぐ鏡で表情変えて遊び出すし、お気に入りの服を着たら帰宅後着替える前に自撮りだって撮る。

 

だれの声かもわからない、わたしを責める声に怯えて、そそくさとトイレを洗面所を出ていく姿は、本当にすきになれない。

 

今鏡の前に立っているわたしはだれなんだろうね。

家にいる時とは別人みたいな顔してるね。

鏡の中のわたしは全然励ましてくれないね。

鏡の中のわたしもだれなんだろうね。

 

いつかこの鏡にうつる知らない人をわたしの中に感じられたらいいな。